テント内で、マットやエアーベッドの上に敷いて眠るための寝具=寝袋の選び方を、子連れキャンプを始めるパパ・ママのためにやさしく解説。
子連れファミリー特有の選ぶ際のポイント・注意点と、おすすめの寝袋を、「はじめての親子キャンプ教室」インストラクターが紹介します。
※寝袋は、英語ではsleeping bag(スリーピングバッグ)、ドイツ語ではSchlafsack(シュラフザック)
寝袋の選び方のポイント1:中綿の違い「化繊」と「羽毛(ダウン)」
寝袋は、中綿の素材が、化学繊維と、羽毛(ダウン)の、2種類に分かれます。
両者は、まったく性格が異なり、価格差もあります。まずはどちらの中綿にするかを、選ぶ必要があります。
それぞれのメリット、デメリット
化学繊維のメリット(利点)
- 安価
- 汚れても丸洗いできる製品が多い
- 濡れても保温性が落ちにくい
化学繊維のデメリット(注意点)
- 保温性の高い寝袋は、重く、大きくなる
- 保管に場所を取る。持ち運びが負担になりやすい。取り回しが大変
羽毛のメリット(利点)
- 少ない量の中綿で、圧倒的に暖かい
- 保管の場所を取らない。持ち運びが楽。軽くて扱いやすい
羽毛のデメリット(注意点)
- 高価
- 保管にかなり気をつかう(カビないように注意)
- 濡れると、保温性がなくなり、使い物にならなくなる
具体的にどれくらい違うのか比較
具体的にどれくらい違うのか、コールマンの化学繊維のシュラフ「パフォーマーIII/C5」と、モンベルの羽毛のシュラフ「シームレス ダウンハガー800 #3」で比較してみましょう。
■価格
「パフォーマーIII/C5」¥ 4,000
「シームレス ダウンハガー800 #3」¥ 33,000 前後
■重さ
「パフォーマーIII/C5」約 1.4 kg
「シームレス ダウンハガー800 #3」約 0.55 kg
■収納時の大きさ
「パフォーマーIII/C5」24 × 41 cm
「シームレス ダウンハガー800 #3」13 × 26 cm
羽毛(ダウン)の中綿の「シームレス ダウンハガー800 #3」は、化繊の中綿の「パフォーマーIII/C5」に比べ、実売価格は8倍前後ですが、一方で重さ、収納時の大きさでは1/3程度と、かなり高機能である事実がわかります。
どちらも、代謝の低い人(主に成人女性)が気温4〜5℃程度まで、代謝の高い人(主に成人男性)が気温-1〜0℃程度までは安眠できる性能の寝袋ですが、まったく別物と言っていい違いがあります。
子どもが小さいうちは、「濡れ」「汚れ」に強い化学繊維のメリットが大きい!
一目瞭然ですが、機能的には、羽毛(ダウン)の中綿の寝袋が圧倒しています。化学繊維の出る幕はありません。
ただし、小さな子どもと一緒のキャンプでは、羽毛には、無視できないデメリットがあります。
「汚れ」や「濡れ」にとても弱く、高級品であるがゆえに、扱いに気をつかう点です。
羽毛は、濡れると使い物にならなくなる!
寝袋は、通常の使用では、そうそう濡れるものではありません。
が、たとえば、子どもは環境が変わると、トイレにうまくいけなくなり、おねしょしてしまうケースがあります。
あるいは、泥だらけの足で踏んづけたり、飲み物や食べ物をこぼして、寝袋を汚してしまうかもしれません。
羽毛(ダウン)は、濡れてしまうと膨らむことができなくなり、保温性能を失います。
また、万が一キャンプ中に汚れてしまって、洗濯しようと思っても、乾きにくいので要注意。一度濡れてしまうと、半日程度では乾いてくれません。
2・3年で使い捨てても後悔しない、リーズナブルさが魅力
そう考えると、そもそも安価で、数千円で購入できてしまう、化学繊維の中綿の寝袋は、たとえ汚してしまっても、「まあいいか」と、諦めが付きます。
また、おねしょしてしまっても、天気が良ければ、朝に水洗いして干しておけば、お昼過ぎには乾くケースすらあります(気温や湿度、陽差しの有無、中綿の量によります)。
車でのキャンプが中心で、かさばるものの、保管もなんとかなりそうであれば、子どもが小さいうちは、2〜3シーズンで使い捨てるつもりで、化学繊維の寝袋がおすすめです。
電車・バス移動がメインなら羽毛(ダウン)も選択肢
化学繊維の中綿の寝袋の欠点は、その重さと、かさばる大きさです。
車でのキャンプが中心であれば良いのですが、電車やバスなど、公共交通機関を使っての移動がメインになる場合は、大きな問題になります。
キャンプでは、着替えやアメニティなど、ただでさえ荷物が増えます。プラスして、1〜2kgの、大きくかさばる寝袋を持ち運ぶのは、子連れでは、あまり現実的とは言えません。
こうなると、羽毛(ダウン)の寝袋の、圧倒的な軽量コンパクトさが、大きなメリットになってきます。
高価ですので、取り扱いや保管(※)に気を使います。ただ、重さ、収納時の大きさは1/3になるため、別次元に持ち運びやすくなります。
また、羽毛(ダウン)の取り扱いやメンテナンスに自信がなければ、無理に購入せずに、レンタルを活用するのも、有力な選択肢です。
※羽毛布団を、押し入れにしまいっぱなしにすると、カビ臭くなってしまうのと同様のデリケートさがあります。オフシーズンは、汚れを落とし、風通しの良い場所に保管する必要があります
寝袋の選び方のポイント2:「対応温度」が重要!キャンプするシーズンは?
化学繊維か、羽毛かを決めたら、続いてチェックするのは、寝袋の対応温度です。
Coleman(コールマン)であれば、
快適温度/一般的に男性よりも寒さを感じやすい女性が、快適に眠れる温度 使用可能温度/男性が寝袋の中で丸くなって8時間眠ることができる温度
mont-bell(モンベル)であれば、
コンフォート温度/一般的に代謝が低く、寒さに対する耐性が低い人が、リラックスした体勢で、寒さを感じることなく睡眠できるとされる温度 リミット温度/一般的に代謝が高く、寒さに対する耐性が高い人が、寝袋のなかで丸まった状態で、寒さを感じることなく睡眠できるとされる温度
といった具合に、どれくらいの気温で使用できる寝袋なのか、必ず記載されています。
“夏のみ” なら15度、 “春〜秋” なら5度対応が目安
寝袋は、保温性能が上がるほど、中綿の量が増え、高価になり、重くかさばります。必要最小限の対応温度の寝袋を選びましょう。
まず、キャンプに行く季節はいつかを、イメージしてみてください。
ハイシーズンである真夏のみであれば、本州以南で、気温が15℃を下回るケースは、滅多にないでしょう。快適温度/コンフォート温度が、15度対応のものを選べば充分です。
春キャンプや秋キャンプもする可能性があるのであれば、標高によっては、5℃あるいは0℃近くまで、気温が下がるかもしれません。この場合は、快適温度/コンフォート温度が、5度対応はあると、様々なケースに対応でき、安心です。
(氷点下になる真冬のキャンプは、子どもが小さいうちは過酷であるケースが多いですので、こちらでの紹介は除外します)
なお、5度対応の寝袋は、真夏のキャンプでは暑すぎます。ただ、そもそも夏のキャンプでは、寝袋に入らずとも、ブランケットをお腹に掛けるだけで、眠れてしまうケースもあります。あまり心配せずとも、様々に対応は可能です。
KingCamp ブランケット マルチブランケット 196×142cm/165*125cm 大判 防寒 コンパクト 超軽量 キャンプ ア…
親子におすすめ「化繊」寝袋3選
iClimb 寝袋 シュラフ マミー型 3M シンサレート充填
6℃対応にも関わらず、価格は4,000円台、収納時18×25cm・0.79kg。安価、かつ軽量コンパクトさでは、他の追随を許しません。
この驚異的な軽量コンパクトさの理由は、中綿に3M™ シンサレート™を使用しているから。
残念ながら少し小さめの設計で、体格の良い大人には窮屈なケースがあるのが弱点。174cm・70kgで、腕周りがぴったりとなります。それ以上に体格の良い方や、肥満傾向の方には不向きです。
小柄な女性や、子どもであれば、問題なく使用できます。
電車など公共交通機関での移動がメインの方は、事実上、他の選択肢はないと行っても過言ではないほどに、優れた製品です。シンサレートの寝袋、選択肢が増えてほしいですね。
フリースイージーキャリースリーピングバッグ/C5
内側の起毛加工のお陰で、対応温度以上に暖かさを感じ、快適です。あまりに気持ちよいので、我が家では、自宅でも布団代わりに使用することもしばしば。真冬でも問題ありません。
また、寝袋2枚をファスナーでつなぎ合わせ、横幅150cmサイズで使用することもできます。ダブルサイズのエアーベッドにもぴったりな、大型の寝袋として使えます。
大人2名、または大人1名+幼児2名程度が、一緒に入ることができます。互いのぬくもりを感じながら眠ることができるので、ファミリーにはとてもおすすめ。
子どもは環境が変わると、より人肌を求める傾向もあります。別々に眠るよりも安眠しやすいはずです。
一方で、かさばりやすいのが難点。収納時の大きさは24×40cmと上記iClimbの寝袋の1.5倍近く、重さは2kgと2倍以上。公共交通機関で移動する方には向きません。
丸洗いやわらか あったかシュラフ
ロゴスから発売されている注目の寝袋が、「丸洗いやわらかシュラフ」シリーズです。
なんと、全面フランネル素材で、とても寝袋とは思えない、抜群の肌触りの良さ。
子どもも喜んで寝袋に入ってくれるはずです。
こちらも、寝袋2枚をつなぎ合わせ、ダブルサイズの大型の寝袋として使用できます。
もちろん丸洗いOK。価格は化繊素材としては少し高めではありますが、ファミリーで安心して使えます。